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職業柄人見知りなんかはしていられないし、又さういふことにかけては密ひそかに自信を持つていた房一も、少したぢたぢとなつた。そのはずみに、房一は路々考へて来た挨拶のきつかけを度忘れてしまつたほどである。
そして、これと全く同じ活気が、あの燃え残りの蝋燭の発する佗びしい、だが、ゆらめくやうな活気が今夜の法事で主人役をつとめている神原直造にもあつた。
房一は手答へのないのを感じた。
「さうだつてねえ」
「何だらう?」
徳次は人の好い、いかにもさう信じこんだやうな眼で二人を眺めた。
と後を追ふと、徳次は
「さやうでござりますか」
「鮒?――それあ喰べるとも」
「さうです。農林学校の先生だとかをしていられると聞きましたが」
かうして、びつくりするほど冴えた、明い日がやつて来た。いや、それは昨日も一昨日もその前も、かういふ日がつゞいていた。だのに、やはり、今日又新しく特別にとび切りにやつて来たとその度に思はせるほどの快い日だつた。どこもかしこも透き通るやうで、はつきりし、乾いた空気がふはりと頬のあたりに触れ、どこからかつんとする気持のいゝ山の匂がやつて来た。
「何かね、わしがどうしたといふんかね」
「それは、まあ、都会風でいけばそれでいゝわけだが」
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