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    「あの人はつまりこんな風な人なんだわ。こんな風に――」

    さう声に出してみた。そして犬の方をふりかへつた。犬は彼の方を信頼にみちた眼で見上げ、しなやかな尾を振つた。

    そこへは、案内も乞はずに、小谷吾郎が気がるに裏口から入つて来た。

    「たゞし、預かるだけだよ。この分が残つている間はいくら後から来ても貰はんよ。いゝかね」

    「分家の当主は今は、若い人の代で、たしか喜作といふ筈ですが、あれも随分永いこと県外に出ているさうですな」

    それはまるで、よほど深く知り合つた間柄の、何年か見ずにいた者同士だけがやるやうな並外れて馴れ馴れしい様子だつた。

    と訊いた。

    今度は正文の方で答へなかつた。そして急に苦がい顔になつて、ぢろりと薬戸棚を見まはしただけで母屋おもやの方へ帰つて行つた。

    「ほう、クレーといふのはカワラケのことかね」

    道平は納得したやうにうなづいたが、又ゆつくり身体を坐りなほすのと一緒に、

    かりるに当って女房が挨拶に行ったら、温泉のぬるいことを例外なく念を押して、

    「途中から――?」

    徳次はこの往診といふ言葉がさきほど河原で房一の口から聞いた時に突然耳新しく身近かに響いたのを思ひ出しながら、それを口にするのを楽しむやうにつけ加へた。

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